ステップ6・7 「古い考え」を手放す

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はじめに

今月のミーティング後の雑談タイムで、コーナーストーンがJIC(GA日本インフォメーションセンター)に登録されたグループでないことについて、ちょっとした諍いがありました。せっかくの機会ですので、改めてグループとしての考えを表明しておきます。

GAコーナーストーンはJICのサービスから独立して活動しています。

理由は、JICから「GAではオンラインミーティングは行っておらず、今後も現状のセキュリティーでは行うことは考えていない」と言われたためです。

それでもオンラインでミーティングを行っている目的は、地方に住んでいるために12ステップを学ぶ機会がないメンバーや、「言いっ放し聞きっ放し」のミーティングでギャンブルをやめることができなかったメンバーにプログラムの原理を伝えるためです。

一部には、「伝統違反」と言われているようですが、伝統は、AAの共同創始者であるビル・Wたち初期メンバーの経験を共同体に伝えていくことや、ビル・Wたち一部のメンバーからグループを守ることを目的に作られたものです。1伝統(一致ためのプログラム)は、ルールや規範ではなく、必要があれば破られるものもやむを得ないのではないかと考えています。事実、AAが発展・成長していく段階では伝統破りも行われていたようです。2

地方にはプログラムに取り組むきっかけすらないメンバーがたくさんいます。コーナーストーンは回復の原理を伝える場を提供したいという思いではじめました。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、先月に引き続いてステップ6とステップ7です。

「古い考え」と「新しい考え」

先月のミーティングでは、私たちはピアノやタイピングのように自分で決めた目的のために努力するのではなく、神に与えられた目的のために努力していく必要があることを学んできました。では、私たちはどのようにステップ6とステップ7を実践していけばいいのかを考えていきます。

…自分のなかにある古い非生産的な考えに耳を貸さずにいれば、やがて古い考えは心の中から消えていく。ビッグブックも保証している。「古い考えが取り除かれて、新しい動機が私たちを支配し始める」(A.A. 41ページ)。古い考えが消えていくにつれて、私たちはそれを新しい考えに置き換えていくことができる。3

ここでは、古い考えから新しい考えに変わっていくことが必要だと説明されていますが、この「古い考え」と「新しい考え」とはいったい何でしょうか。

ジョー・マキューは、「古い考えというのは、利己的、不正直、身勝手な私たちの性格から生じる決まりきった思考パターンのことである。」と説明しています。利己的、不正直、身勝手というのは、棚卸表の第4列でみてきた自分の過ちや欠点の本質ことを指しています。これらは、神と自分との関係を妨げているものでした。

言い換えると、「古い考え」というのは、神と自分との間に障害物があるために、自分の意志だけに基づいて、何もかも自分でコントロールするという自己中心的な考えのことです。一方、「新しい考え」とは、自分の行動を神に導いてもらうという、神の意志に基づいた考えのことです。

つまり、私たちがステップ6とステップ7で取り組むことは、「自分の意志に基づいた生きた方」をやめて、「神の意志に基づいた生き方」をしていくことです。

手放すことからはじめる

「あなたはどうやって新しい車を手に入れますか?新しい車を手に入れるために、いちばん最初にすることは何でしょう?」ほとんどの人が、まず新聞を調べたり、ディーラーの店を訪ねたりするというようなことを言う。でも、それは間違いだ。いちばん最初にしなければならないのは、古い車に見切りをつけることだ。「新しいタイヤをはかせてみようか」などと考えているあいだは古い車が手放せない。でも、そのうち「この車にはもううんざりだ」というときがくる。新しい車を手に入れようとするのはそれからだ。ステップ6と7で私たちがしなければならないのはこのこと、つまりある領域に見切りをつけることである。4

次に、ジョー・マキューが説明しているのは、実践する順番です。ここでは、車を買い替えることを例に出していますが、新しい車を手に入れるためには、まず古い車を手放さなくてはなりません。車であれば、新しい車を買ってから、古い車を手放すということができるかもしれませんが、私たちの考えについては、はじめに古い考えを捨てない限りは、新しい考えを自分のものにしていくことはできないようです。

新しい考え方を手に入れる前に、まず古い考えを捨てること、すなわち自分の意志に基づいた生き方をやめるということは、プログラムに取り組んでいくうえで、とても重要です。その証拠に、『回復の「ステップ」』でも、ジョー・マキューは聖書の引用やダイエット、熱気球、真空の法則などたくさんの例を出して、繰り返しその重要性に言及しています。

だれもが、これから手に入れるものによって変わることができると思っているが、そうではない。これから手放していくものによって変われるのだ―それはちょうど、熱気球が重しの砂袋を投げ捨てて上昇していくのに似ている。ところが、砂袋を捨てようとせず、重しを抱えたままでなお上昇したがる人が多い。5

こちらは、熱気球の例です。先ほどの車のたとえよりもわかりやすいかもしれません。

私たちの霊的な変化は、手に入れるものではなく、手放すものにかかっています。

私はずっと勘違いをしていましたが、プログラムについての知識を学んで、それを理解すれば回復すると思っていました。また、参加していたスタディミーティングなどでもそのような話がされるのを聞いてきましたが、いまひとつ腑に落ちないでいました。

私の場合は、一度で理解することはできませんでしたが、プログラムに取り組みながら仕事や家庭などさまざまな場面で困難に直面するたびに、知識を得るだけでは何も変わらないんだということを学んでいったように思います。

欠点は勝手になくならない

ステップ6と7で陥る大きな失敗のひとつは、ステップ6と7は何か簡単な自動的にやれるようなステップだと勘違いすることである。神にゆだねてこう言う、「私の性格の欠点をすべて直してください」しかし、そういうことは起こらない。私たちには自分の意志が与えられていることを思い出そう。6

これも、知識を得ることができれば回復するのだということと同様に、ステップ6とステップ7で誤解されていることのひとつです。

プログラムのことについて、「認めて、信じて、おまかせ」と説明されるのを聞いたことがあるかもしれません。しかし、神に祈ってあとはよろしく、と何もしないままでは変化は起こりません。

前回もみてきたように、自分の意志は神から与えられたものであり必要なものですが、それを自分で決めた目的のために使うのではなく、神に与えられた目的のために使っていくことが大切だということです。 それが、ステップ6とステップ7では、「古い考え」を捨てるということになるのでしょう。

おわりに

ステップ6とステップ7に入って2ヶ月経ちましたが、予定よりも時間がかかってしまいそうです。ミーティングでは、毎回、赤本を読みながら、要点や論点になりそうなところ解説・議論するかたちで進めています。また、質問などがあればそこを深めて考えています。

ここからは赤本の内容も繰り返しになってきますので、運営側で用意しているネタも2つほどになってきました。しかし、予定通りに進まないのも、ミーティングの面白さの一つですので、引き続いて多様なメンバーの参加をお待ちしています。

最後に、本年もお世話になりどうもありがとうございました。ミーティングに参加してくださった人はもちろんですが、直接の関わりがなくてもたくさんの人に支えられて1年を過ごすことができたと実感しています。2025年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


  1. アーネスト・カーツ、葛西健太・岡崎直人・菅仁美訳「アルコホーリクス・アノニマスの歴史-酒を手ばなした人々をむすぶ」(明石書店、2020年)第四章 ↩︎
  2. カーツ前掲(注1)第五章 ↩︎
  3. ジョー・マキュー、依存症からの回復研究会訳『回復の「ステップ」-依存症から回復する12ステップ・ガイド』(一般社団法人セレニティ・プログラム、2008年)p.92 ↩︎
  4. ジョー前掲(注3)p.93 ↩︎
  5. ジョー前掲(注3)p.95 ↩︎
  6. ジョー前掲(注3)p.94 ↩︎
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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 年が明けてしまいましたが、今、読ませてもらって力をいただけました。(明日からの仕事に行く勇気貰いました!)
    りゅうさんの書いたものは、とても分かりやすく、また、読みやすくて、いつもとても楽しみです。
    私も、つい知識だけを身につけてわかった気になってしまいます。身につけたらそれを使えるように、今年もコツコツ仲間と共にやっていきます。
    どうぞよろしくお願いします。いつもありがとうございます。

    • あさりさん
      いつも励みになるコメントをありがとうございます。
      学んでも失敗してみないとわからないことばかりです。
      それでもくじけずに行動していきましょう。
      本年もどうぞよろしくお願いします。

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