2025年8月 ステップ11 総論・夜の祈りと黙想

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はじめに

今月は『Not-God』のスタディ・ミーティングは準備期間のため開催がありませんでした。私自身の体調不良や子どもの入院も重なり、思うように準備が進まず焦りを感じることもありました。

ただ、次回の10月26日まではまだ時間があります。限られた状況の中でも、参加してくださる方の役に立てるよう少しずつ取り組んでいきたいと思います。

通常の第2水曜日のミーティングはお盆の時期とも重なりましたが、休むことなく開催し、多くのメンバーが参加してくれました。本稿は、その回で扱ったステップ11「祈りと黙想」の振り返りです。

神の導きを得る

そうしてステップ11までくると、祈りと黙想が効果的にできるようになる。祈りと黙想ができるようになると、だれもがスピリチュアルな目覚めを経験する。力の「内的資源」を掘り当てるからである。1

ステップ10までを通じて、私たちは少しずつ「神」という存在を意識しはじめ、直感や第六感のようなものを経験するようになります。

ステップ11では、祈りと黙想を実践することで神からの導きを受け取り、それを具体的な行動へとつなげていくことが課題となります。

もっとも、「効果的な祈りや黙想」と言われてもイメージがつかみにくいかもしれません。ギャンブラーであれば、大勝負の前や資金が尽きそうなときに「どうか勝たせてください」と祈った経験があるでしょう。しかし、それは自分の願望を神に押しつけるもので、ここでいう祈りとは性質が異なります。

プログラムにおける「祈り」とは、自分の望みをかなえてもらうお願いではなく、神の導きを実践に移せるよう助けを求める行為です。そして「黙想」とは、ただ考えをめぐらすことではなく、神の声に耳を傾けようと心を開く能動的な姿勢を指します。

ミーティングでは、「なぜここでは『神』や『ハイヤー・パワー』ではなく『内的資源』という表現が使われているのか?」という問いが出されました。ビッグブックには「一人ひとりのおおもとの深いところに神の意図がある2」と書かれていますが、それが神そのものなのかは明確にはされていません。

宗教であれば「導きがどこから来るのか」を体系的に説明しますが、私たちのプログラムはあくまで「スピリチュアルな幼稚園3」です。導きが正確にどこから来るのかは議論せず、まずはその働きを信じて実践に結びつけることが大切です。そうしたことから、ジョー・マキューはあえて「内的資源」という言葉を用いたのだろう、と話し合われました。

夜の祈りと黙想

「貴重な提案」の最初は、夜に行う黙想である。スピリチュアルな生き方を目指す人は、夜、眠りにつく前に一息入れて、一日の振り返りをしたほうがいい。4

テキストでは「一日の振り返り」とだけ簡潔に記されていますが、ビッグブックでは就寝前にステップ4〜7をやり直すことが勧められています。

ステップ10では、日中に問題が生じたときすぐに点検することが基本です。そこに加えてステップ11では、一日の終わりに静かな時間を取り、全体を振り返ることが求められます。

では、どんな祈りを用いればよいのでしょうか。ミーティングでは「まずはビッグブックに載っている祈り(p.91, p109)を実際に使ってみるのがよいのでは」という意見が出ました。さらに、『12のステップと12の伝統』や『一日二十四時間』に紹介されている祈りを声に出すのも助けになる、との提案もありました。

ジョー・マキューは「夜に5分5」と目安を示していますが、厳密な決まりはありません。大切なのは、自分が神からどのような役割を託され、どのように行動すべきかを静かに思いめぐらす習慣を持つことです。

なお、「朝」の祈りと黙想や「決断できないとき」の祈りと黙想については、次回以降に取り上げていきます。

おわりに

ジョー・マキューは第9章の冒頭で、12ステップを「吊り橋6」にたとえています。ビッグブックには「凱旋門7」という比喩も出てきます。私自身は、スポンサーから「歯ブラシ」にたとえられたことがあります。

どのたとえが一番しっくりくるかは人それぞれですが、共通しているのは、プログラムを相手に伝わる形で分かち合う工夫が重ねられてきたことです。

私自身も、自分なりに表現を工夫しながら、プログラムのメッセージを伝えていきたいと思います。


  1. ジョー・マキュー、依存症からの回復研究会訳『回復の「ステップ」-依存症から回復する12ステップ・ガイド』(一般社団法人セレニティ・プログラム、2008年)p.144 ↩︎
  2. AA日本出版局訳「アルコホーリクス・アノニマス」(NPO法人AA日本ゼネラルサービス、2004年)p.80 ↩︎
  3. ジョー前掲(注1)p.145 ↩︎
  4. ジョー前掲(注1)p.146 ↩︎
  5. Joe M. and Charlie P. 『The Big Book Comes Alive』 Recorded in Laughlin, Nevada, August 1988 ↩︎
  6. ジョー前掲(注1)p.143 ↩︎
  7. AA前掲(注2)p.90 ↩︎
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